不動産・土地と「相続税」について
家族が亡くなったら、悲しんでいる間もなく、あれこれ進めなければならず、経験したことがある方は驚いたのではないでしょうか。
病院で亡くなっても、すぐ葬儀会社などに依頼し、遺体を移動してほしいという話が出るので、あらかじめ葬儀のことを考えていなかったらかなり慌てます。
相続に関しても、遺言書などがあれば比較的スムーズに進みますが、生前にそういったものを用意している人はまだ少ないよう。
さらにそれなりの資産を持った方が亡くなると、今度は法定相続人も「相続税」についても心配しなくてはなりません。
ここでは土地など不動産が遺産に含まれる場合の「相続税」について、どう考えておくべきか、みていきましょう。
目次情報
1-1. 相続税には基礎控除がある
2. 相続税の実例
2-1. 不動産資産(収益ビル)2億円 妻あり子供3人で父親が他界した場合
2-1. 不動産(収益ビル)2億円 ローン残債5千万円 妻あり子供3人で父親が他界した場合
相続税基礎控除になるケース
相続税には基礎控除がある
遺産を相続されたら、誰もが「相続税」を払わなくてはならないわけではありません。
以下のような場合は、相続税はかからないようになっています。
●相続税の控除
基礎控除額 = 3000万円 + ( 600万円 × 法定相続人の人数 )
例えば子供が3人いて、旦那さんが亡くなった、というとき、法定相続人は妻を含む4人となります。
この場合ですと
基礎控除額 = 3000万円 + ( 600万円 × 4 ) = 5400万円
ということになります。
5千4百万円以下の遺産だった場合は、どなたも「相続税を支払わなくていい」ということなんですね。
また生命保険や死亡退職金も、おのおのが
生命保険の非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の人数
死亡退職金非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の人数
というように、ここまでの金額は非課税となっています。
例に挙げたケースだと、
生命保険非課税限度額 = 500万円 × 4 = 2000万円
死亡退職金非課税限度額 = 500万円 × 4 = 2000万円
ということになりますので、いずれも2千万円までなら課税されないということなんですね。
相続税の実例
不動産資産(収益ビル)2億円 妻あり子供3人で父親が他界した場合
この場合ですと、
3000万円 + (600万円 ×4)=5400万円まで非課税
2億円 - 5400万円 = 1億4600万円に対して課税
相続割合は妻が2分の1相続、子供がその半分を3等分するので、6分の1ずつとなります。
●課税される金額と税率・控除額
課税される金額 |
|
控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | - |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円以上 | 55% | 7200万円 |
このようになっていますので、
妻 = 7300万円 × 30% - 700万 = 1490万円 ?
と計算できるんですが、妻、つまり「配偶者」は、「1億6千万円まで非課税」となる「配偶者控除」があります。
ですので
妻 = 配偶者控除で1億6千万まで非課税 = 相続税 0円
子供たち = 2434万円 × 15% - 50万円 = 相続税 315万円 ずつ
このようになります。
こういったときの一番の問題は現金がそれほどない場合。
不動産価値が2億あっても、現金が2百万ほどしかなければ、子供たちは取り急ぎ315万円の相続税をを、「現金で」耳をそろえて納めなければならないのです。
また収益ビルの場合、きれいに分けるのもかなり難しかったりもします。
不動産(収益ビル)2億円 ローン残債5千万円 妻あり子供3人で父親が他界した場合
同じケースで今度はビルを建てた残債がある場合を見てみましょう。
この場合ですと、負債は資産から相殺されますので
3000万円 + (600万円 ×4)=5400万円まで非課税
2億 - 5000万円 - 5400万円 =9600万円に対して課税
妻 = 4800万円 × 20% - 200万円 = 760万円となるが「配偶者控除」で相続税は 0円
子供たち = 1600万円 × 15% - 50万円 = 相続税 190万円 ずつ
このようになります。
こちらの場合も、現金がなければ、相続税がそれほどの額でないにしろ、納めるのに苦労するかもしれません。
不動産の相続は他にも面倒な点がある
現金や株式などなら、ある程度財産を分けるのにも、また相続税が発生しても支払に苦労することはないかもしれませんが、不動産だけがあり、現金がない場合、分けるのにも苦労しますし、税金の工面も大変です。
例に挙げたような収益ビルだと、例えば2階は姉、1階は弟、などと分けることが考えられますが、収益が2階と1階で違うとまたもめたりすることも。
また分けられたとしても、1人がビルを売却したいと思っても、別の人がいやだというと進められないなど、後々ややこしくなることが多いようです。
ですので、こういったことを見越して、生前から持っている不動産をどうしていくべきか、考えておくことも大事なのです。
まとめ 現金がなくても相続税は持っていかれる!
それなりの財産がある場合、ある程度現金なども残していないと、相続した遺族が税金の支払いで困ってしまうケースがあるということが分かりました。
とはいえさまざまな事情がありますから、そんな簡単な話ではない場合もあるでしょう。
ある程度不動産や土地など財産がある場合、万が一に備え、自身の持っている土地や不動産がいくらなのか把握しておいたり、生前に現金化しておくなどといった対策をしておくほうが賢明な場合もあるかもしれません。
またこのような財産がある親族がいる方は、相続したときにどのくらい相続税がかかるかある程度把握しておき、支払えるくらいのお金を貯めておくことも重要です。