賃貸物件(アパート)経営の現実理想とリスク

 

空地があると、それだけでも固定資産税や維持管理費があれこれとかかってくるものです。
相続などで譲り受けても、自分が暮らす予定がないなら、何らかの形で活用しなければ、ただお金が出ていくだけの「厄介者」になってしまうかもしれませんね。

 

そういった土地を活用するのによく聞くのが「賃貸物件(アパート)経営」。
その土地にアパートを建て、家賃収入を狙う、というもの。
ここではそんな「賃貸物件(アパート)経営」による土地活用の実際について、みていきましょう。


「賃貸物件(アパート)経営」とは?

 

「賃貸物件(アパート)経営」とは、空地に複数戸の賃貸アパートを建てて、入居者を募り、家賃収入を得る、というものです。
うまくいけば、家賃が毎月入ってくるので、かなりの収入を見込める場合も。
ただし、余裕資金がない場合(たいていの方はないですね)、アパートローンなどというローン(借入)を銀行などから行う必要があります。
また部屋がその周辺地域の賃貸物件として「マッチしているか」ということも大事。

 

例えば学生さんや単身者のニーズが多いなら、そういった人が好む部屋にすべきですし、ファミリー層のニーズが多いなら広さや水回りももう少し配慮が必要になる、など。
そういった部分もきちんと想定しないと、せっかく建てても入居者が見つからない、ということにもなりかねません。
ざっくりとした経営への流れとしては以下のようになっています。

 

  • 物件の設計、建築費の計算
  • 融資の申請や審査、実行
  • 建築、不動産業者に働きかけるなどし、入居者を募集
  • 完成したら経営を開始、賃料の遅れなどがあれば督促
  • 物件の保全、修繕など

 

ごく簡単にかきましたが、不動産の登記や、家賃収入が発生することから、税務署へも届け出をすることや、毎年確定申告を行うということも発生しますので、そういった行動や知識を得ることも必要となってきます。

 

例えば4戸のアパートを建てるのに諸々かかる費用は3000万円ほど、といった感じですが、家賃を7万円としたら満室だと

 

7万 × 4戸 × 12か月 = 年間の家賃収入 336万

 

といった感じ。
この数字だけ見ると、10年で元が取れるのか~、なんて思ってしまいますが、そんな短絡的な考え方ではダメな面も多々あります。

 

大手不動産会社の「一括借り上げ」はどう?

 

最近ではテレビのCMで「〇〇建託の一括借り上げ」なんてフレーズ、よく見かけますよね。
土地を遊ばせておくだけではお金が出ていくだけなので、何かいい方法があれば活用して収入につなげたい、とだれもが思うもの。
でも知識もないし、手続きを自分ですべてやるのは大変…そういった人に向けて不動産会社が代行するような形で動いてくれるものです。

 

設計から融資の話、そして入居者の募集などもトータルに進めてくれるだけでなく、そのまま「一括借り上げ」ですから、一定の収入を約束する、なんて、いいことばかりにしか聞こえませんよね。
でも実は賃貸物件は現在飽和状態と言われていて、新しく立地条件がいいものは比較的埋まりやすいですが、築年数が古くなるごとに入居者が入りにくくなるもの。

 

そういったことから、のちに振り込む金額を変えてくるということも往々にしてあるということなのです。
ですからこういったものにすぐに飛びつくのも危険な場合もあるのです。

 

「賃貸物件(アパート)経営」に潜むリスク

 

「賃貸物件(アパート)経営」のリスクとはどういったことがあるのか、それは以下のようなものです。

 

  「賃貸物件(アパート)経営」に潜むリスク
空室のリスク 借入金が支払えなくなる場合もある
家賃が滞るリスク 家賃の督促は思いのほか大変。借主のほうが立場が強い面もあり
事故物件のリスク  単身の方、高齢の方など、急病で亡くなり後で見つかると、事故物件になり借り手がつかなくなったり減額しなければならなくなる
経年劣化のリスク 給排水管の漏水事故が起こると、階下の入居者へのフォロー、原状復帰の工事要請、費用面など対応に追われる
住民トラブルのリスク 入居する人がみな良好な関係とも限りません。トラブルのフォローも必要になるかも
火災や地震のリスク 保険には入るでしょうが、火災、天変地異があった場合、安全性を問われる場合も

 

簡単に挙げただけでもこれだけさまざまなリスクが考えられます。
また物件は日に日に劣化していくものであり、外壁や屋根などや給湯器の類は10~15年に一度、バスキッチンなども20年に1度程度は更新しませんと良好な状態は保てませんし、入居者の使い方によっては大幅にリフォームしなければ次の入居者を募れないことも。
家賃収入だけがこういったすべてのものの頼みの綱ですから、もし空き室が多ければどれもこれも滞っていくことになるのです。

 

実際知り合いに、築40年超の物件を持っている方がいるんですが、数年ごとに漏水事故を起こしていて、その度に階下の方の物損の補償や原状回復、漏水箇所の特定や工事業者の手配などに追われています。
そういったこともすべて自身が行わなければならない、ということも知ったうえで、経営に乗り出すかどうかは熟慮すべきではと思いますね。

 

まとめ 素人考えで手を出すのはあまりにも危険

 

土地とまとまった資金があるなら、またその土地が賃貸物件のニーズを掴めるような好立地であれば、アパート経営も軌道に乗るかもしれません。
しかし収入面、利回り面だけを見て、さまざまなリスクやトラブルの対応などを想像せずに、安易にアパートを建てるのは危険です。
先々の修繕、保全費用も見越して、しかも空室が例えば半分あったとしても収支があう、というような余裕のあるキャッシュフローでなければ、簡単に参入すべきではない。

 

「一括借り上げ」に関しても、リスクを確認し、それよりもメリットが上回るかどうかをよくよく考えること。
賃貸物件としてニーズが見込めない土地であれば、むやみに借り入れを増やして経営に乗り出すより、手放すほうが賢明な場合もあるかもしれません。